「おいしいのに」と言わないで。~シイタケ物語~

シイタケ 仕事の話

「これ嫌いなんだ」

こう言うと一緒に食事をしていたかつての恋人たちに決まってこう言われた。

「え~なんで?これおいしいのに!」

食べ物の好き嫌いが人より多い私。これまで生きてきて、このセリフをいったい何回言われたことだろう……。

自分がおいしいからって他人もそうだ、となぜ思うのか。人間は好き嫌いがある生き物だという認識をせずに他人に押しつけるなんて、まったくもって理解できない。そしてこう言いたい。君にだって嫌いなものがあるでしょ?

「おいしいのに!」と言われるたびに心の中で毒づく。

(それは君の主観でしょーよ……)

「これおいしいのに」ふたたび

あれからウン十年、いいおっさんになった私。さすがに「これおいしいのに!」はもう言われなくなった。好きなものだけを食べて生きている。

しかし、最近またこの憂鬱なセリフを聞くことが増えてきた。
それは、私にではなく、娘(小3)が言われるのだ。

「え~なんで?これおいしいのに!」

ウソをつく大人たち

娘(8歳)はピーマンが嫌いである。「うえ!にがい」

まわりの大人たちは、なにかとあれこれ理由をつけてピーマンを食べさせようとする。

「え~なんで?おいしいのに!」にはじまり、

「好き嫌いはやめようね」
「栄養があるから食べようね」

それでも頑なに食べない娘に、あろうことかウソをついたり本人にはなんら関係ない話をしてくる人もいる始末。

「大きくなれないよ」
「世界には食べられない人がいるのよ」

そのたびに私はこう思う。

(そうまでしてうちの娘に無理やり食わそうとするのはマジでやめろ……)

そこでふと気づいた。あれ?これ全部私が小さいころ両親から言われたセリフのまんまだ。

昭和のしつけ

好き嫌いはやめようね

私はシイタケが嫌いだった……(ちなみに今も嫌い)。

両親にそれはもう無理やり食べさせられた。なにかに追われているのかと思うほど、しつけという呪縛。「シイタケおいしくない……」なんて口にしようものなら、食べるまで食事が終われない。

あるとき頑なに拒否をしたら、なんと次の日の晩ごはんを抜かれた。「好き嫌いする子にあげるごはんはありません!」キビシイ親だった。

いい思い出もあった。食卓に私の好きな鶏肉が出ると母親が、あなたはこれ好きよねぇ?、と言いながら、自分の皿から取り分けてくれて優しかった。なぜか鶏皮の部分だけだったが、とてもうれしかったのを覚えている。

ところがどっこい、あとになって知るのだが、母は鶏皮が大嫌いだったそうな……。のちに「あの鳥肌のブツブツが苦手なのよぉ」とのたまっていた。なんてことはない、自分は好き嫌いをしていたのだ。

父親は父親で牡蠣が嫌いなこともあとで知った。牡蠣はウン○を食べるから、というのが理由だった。なんだそれ。

おい!あんたらも晩ごはん抜きだあぁぁ!

こんな二人に、好き嫌いをするな!とさんざん怒られ、ときには夕食抜きにされていたのである。大人って。

栄養があるから食べようね

これもよく言われた。

みんな、栄養があるから食べるの?ちがうよねぇ。おいしいから食べるんだよねぇ。

あまりに言われるので、あるとき「シイタケってなんの栄養があるの?」と父親に尋ねたら、一瞬つまったあと「つべこべ言わず、いいから食べろ!」となぜかキレられた。小生意気な息子だった。

大きくなれないよ

「シイタケを食べないと大人になっても大きくなれないのよ!」

そんなわけはない。
「私ねぇ、小さいころシイタケを食べなかったばかりに全然身長が伸びなかったんですよ~ハハハ」という小っさいおじさんに出会ったことはない。

しかし子どものころは(大きくなれないかも……)と本気で心配して涙目になりながら一生懸命シイタケを食べた。

よくもしゃあしゃあと。母親め。

世界には食べられない人がいるのよ

「世界には食べられない人がたくさんいるのよ!食べられるだけありがたく思いなさい。はい、シイタケを食べて」

これもよく言われたのだが、最初意味がわからなかった。世界の食べられない人って誰だよ。自分となんの関係があるんだ?

ある日、自分なりに考えに考えて、ある提案を思いついた!

「ぼくのシイタケを、食べられない人に送ってあげて」

われながらいい案だ。子どもながらに思った。みんなハッピー。

だが突然の申し出に両親は動揺。顔を見合わせたあと「そ、そんなことできるわけないでしょ!」

父の口ぐせ「アフリカの子どもはな、食べるものがないんだぞ」とえらそうに言っていたのはなんだったんだ。がっかりしたのを覚えている。

栄養はほかでとればいい

話は戻ってこの飽食の現代。ピーマンが嫌いであれば他の野菜で補えばいい。娘は野菜全般は好きなのよ。ただピーマンが嫌いなだけ。無理やり食べさせようという思考がよくわからない。

私の場合、シイタケはトラウマになってしまった。どうしても子どものときの体験がよぎる。シイタケ=嫌な思い出。両親に強要された結果、一生食べないこととなった。本末転倒だよ、まったく。

だから、娘に同じような体験をさせたくはない。
今はピーマンを嫌いかもしれないけどさ、大人になったらきっと食べられるようになるからさ。

「おいしいのに」と言わないで

いやがる子どもに無理やり食べさせようとするのはやめようね。
「え~なんで?これおいしいのに!」とか絶対に言わないようにね。

最後に、シイタケ生産者のみなさん。

嫌い嫌いばっかり書いてしまって、なんかごめんなさい……。出汁は好きです!

おまけ

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しいたけ占いなるWEBサイトを見つけてびっくり。

すごい人気らしい……!

私の場合シイタケのイラストだけで萎えてしまって、星座シイタケをクリックできなかったけども……。

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