駆け込み寺が企業を救う。私のやりたい仕事

府中家具CM 仕事の話

以前、ある会社を新聞で知る機会があった。

基板修理で機械を延命 中小、保証終了後の「駆け込み寺」(日本経済新聞)

それは、保証・対応期間の過ぎた古い産業機械を専門に、基板修理を手がける「駆け込み寺」の会社の記事だった。送られてくるこわれて動かない基板をひとつひとつ部品交換をして、古すぎて廃盤になっていれば代替品を探して直すという手間がかかる仕事。産業機械は買い替えとなると数百万~数千万円かかるが、標準的な修理費用が数十万で済む、という内容だった。

この記事を読んだとき、ちょっと鳥肌が立ってしまった。

この会社は、中小企業にとってはなくてはならない存在であり、日本の製造現場を縁の下で支えている!

しかもたった数十万円でいいの!?ほぼオーダーメイドだよ?それでまた機械が動くようになるなんて。私は、こういう唯一無二の仕事でもって誰かを裏方で支える人、いわゆる職人にものすごくあこがれるのだ。

修理で支える、ものづくりの現場

中小企業の製造現場は、常に品質とコストとの戦い。元請けからの厳しいコストカットや、低価格のアジアの工場とも競争せねばならない……!

加工機や製造ラインはまさに生命線。高精度な製品の生産を目指して、そのうえさらにコスト低減をかかげ、日々努力しておられるのを知っている。

それを支える産業機械がこわれると、大変な負担になる。生産は止まってしまうし、買い替えとなると莫大な資金が必要だから、すぐすぐというわけにはいかない。設備投資の余裕がなければ、数千万円の融資を申請する必要があるかもしれない。

そこへこの基板修理の「駆け込み寺」!数十万円の基板修理でもって継続生産が可能となるのである。

日本の製造現場を支えている!といっても過言ではないだろう。
そして、中小零細の製造業のみなさんにとって、ものすごく喜ばれる仕事だと思う。

修理が生む、感謝と感動

修理というと、20代のころの私の仕事を思い出した。

かつて家具屋に勤めていた私。週末になると多くの来店があり、売り場で接客をして家具を買ってもらうのが仕事だった。

いろんなお客さんが来るなか、私は特にイスの張替えが好きだった。昔うちで買ってくれたダイニングチェアの座面の布・皮が破れて、張り替えてほしくて持ち込んでこられるのだ。

でも、これを販売員が避ける避ける。
なぜかって、イスの張替えの接客って、正直めちゃくちゃめんどくさいのだ。

まず、張替え可能かイスを裏返して構造を確認。いけそうなら、座面の生地を選んでもらう。生地も定番カタログにはないから、いちいちメーカーに問い合わせてメートル単位で取り寄せられるか確認せねばならない。OKなら、生地を発注。後日、預かったイスと生地を持って、今度は修理専門の木工屋さんへ持ち込む(メーカーは工場ラインだから、あんまりやってくれない)。

いわゆるオーダーメイド。当時なかなかここまでやれる販売員はいなかった。この道40年の店長と私くらいだったと思う。

ただ、これだけやっても、店売上はだいたい2~5万円くらい。少なっ!
販売員が避けるのはおわかりだろうか。みんな売上目標があるから、手間ばっかりかかるわりには売上の少ない張替えはやりたくないのである。

イスを抱えたお客さんが入ってくると、みんないっせいに忙しいフリをしだす。運悪く声をかけられようものなら、自分が担当になってしまうから、用もないのにバックヤードに引っ込んでみたり、突然内線電話をかけ始めたり。なかには「そういえば、○○はどうなったかな」とひとりごとを言いながらあからさまに2階へ逃げていく社員も。見ていて滑稽だったw

そんなイスの張替えを私が率先して受けるには理由があって、それは、張替えした修理品を受け取りに来たお客さんが、こちらの思う以上に喜んでくれるのだ。

十数年も使ってこわれたイスを、わざわざ持ってくるくらいだから、お客にとっては、ものすごく思い入れのある家具である。婚礼の家具かもしれない。家族が増えたときに買い換えたものかもしれない。とにかく思い出がいっぱいつまったイスなのだ。

当時購入した新品価格よりも修理費用が高くなることもしばしば。でも、高いからやめるっていう人はいない。少々費用が高くても注文してくれる。ただのイスではないんだね。

ダメもとで来ているから、私の「修理できると思いますよ」のひと言でまず、喜ぶ。1週間後受け取りに来られて、またそこで「うわ~!直った」と喜ぶ。

言ってみればたかだかイスの座面修理で、二度も感謝されるって……。私はその快感がやみつきになってしまった。

もし「う~ん、古いですから張替えは難しいですねぇ……この際買い替えませんか?」とすすめたら、お客は「しかたないか」と言って新しいイスを買ってくれるだろう。そうなるとイスだけというわけにはいかず、テーブルの木目と色が合わなくなるね、とテーブル+イス4~6脚セットで買ってくれる。そうすると、15~30万円ほどの売上になる。

販売員にとっては、店売上と販売目標達成のためには、そちらのほうが利益が大きい。たいていの販売員は、わざわざそんなしちめんどくさいことはしたくないし、そもそも張替えのやり方を知らないだろう。

でも私はそうは思わない。

「家具屋たるもの、張替えくらい受けられなくてどーするんですかぁ!?」

逃げ回る先輩たちにいつもそう軽口を飛ばしていた。

府中家具CM

職人の矜持、誰かのために

すごい技術や資格を持ち、それを自分(自社)の利益のためだけに使うのではなく、お客や世の中の人、誰かのために使う人。世の中の幸せのためにそこへ導くことができる人。

私はとてもあこがれる。

日ごろ、WEBサイトの構築やデザイン、広報コンサルなどの仕事をさせてもらっていて、末席ではあるが、常々、そういう存在になりたい……!、と思って、顧客と向き合っている。

私では「産業を支える」には到底およばないかもしれない。だが、あこがれを持ちながら、これからもそこを目指して仕事をがんばっていきたいと思う。

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