当時小学4年生だった娘が、学校から帰ってくるなり憮然としている。
「今日の体育、見学させられた……」
させられた!?
いったいなにがあったのね……。
赤白帽がないと体育はダメ

走るのが大好きな娘、今日はみんなで鬼ごっこの日だったらしく、それはそれは前日から楽しみにしていたところ、うっかり赤白帽子を忘れてしまったらしい。
「赤白帽子がないと見学だ、って、先生が言うけえ、理由を聞いたんよ。だって体操服はあるけえ鬼ごっこできるじゃん」
おー、さすがわが娘。疑問に思ったことは質問をする子なのだ。
「先生は、なんて言ったの?」
「熱中症になるから、って言うからさ、やった!と思ってね、こう言ったの」
登校の帽子ならあるよ!
そう、娘は毎朝帽子をかぶって登校しているのだ。
100%お前が正しい!
帽子はある!
しかし、何度お願いをしても担任には聞き入られず、結局、強制見学……。クラスのみんなが大はしゃぎで鬼から逃げ回るのをブスっと眺めていたらしい。
「父ちゃんどう思う!?熱中症が理由なら帽子があればいいと思わん?意味わからん!」
ナットクがいかない娘はずっとプンプンしていた。
娘よ!
100%、おまえが正しい!帽子があればまったく問題ない!
帰宅してからもずっと怒っているのは、鬼ごっこに参加できなかったのももちろんあるが、先生の言う「理由」と「見学指示」がまったく矛盾していて、そこにナットクがいかなかったんだと思う。
正論でキレる娘を頼もしく思う
でも、正直、私はうれしかった。
なぜなら、娘は“疑問に思う気持ち”を持っていたから。
子どもたちが大半を過ごす学校。彼らは、来る日も来る日も、ルールのかたまりの中で生活をしている。
- あいさつをしよう
- チャイムの5分前には席に着こう
- 廊下や階段は走らず「右側通行」をしよう
- キャラクターの文房具は持ってきてはいけません
- あだ名をつけてはいけません
挙げだしたらいくらでも出てくる。それにはいずれも理由があるが、なかには首をかしげるルールも多い。
毎日その中にいると(ん?)と思ったことでも、だんだんと気にならなくなり、しまいには疑問に思うことさえなくなって従順していってしまうのが常なのに、娘は「それは、おかしい!」とちゃんと声に出したのだ!
われわれが幼かった高度成長期時代を振り返ると、学校が定めた“決まり”がやたらと多かった。なにせ子どもの数が多い。ルールでまとめなきゃ、とてもじゃないけど生徒たちを管理することなどできなかったんだと思う。
ただ、その時代にできた“決まり”が、半世紀の時空を超えて少子化現代でも守ることを強いられ、いまだ当たり前のように、でん!と存在しているものもたくさんある。
赤白帽子がないと体育は見学
これも先祖代々脈々と引き継がれてきた由緒あるルールだ。熱中症という理由は、おそらくここ最近とってつけたもの。夏が死ぬほど暑くなったのはここ数年だからね。
まったく関係ないが、日本の伝統文化もこれくらい引き継がれるといいのにな、と思う今日この頃である。
パンイチなわとび事件
ふと40年前の私の小学生時代を思い出した。
ある日の朝礼。その日は体育の授業があったのに、K君はものの見事に体操服一式を忘れてしまった。申し訳なさそうに先生に申告をすると、日が悪いとはこのことで、担任は朝から機嫌が悪かった……。
「裸で体育をやりなさい!」
え?裸?いやそれは、罰にしてはちょっとやり過ぎじゃない?と、ざわつく教室。私も驚いたが、ヒステリック気味の担任にK君は逆らうこともできず……。
体育の時間になり、整列をして待っていると、校舎の陰からもじもじしながら、K君が出てきた。その姿にクラスメイトは驚愕……!
白ブリーフ1枚に、両手になわとび
(えーーー!マジでパンイチ)

恥ずかしそうに内股。そのなんともあわれな姿に、笑う者など誰一人おらず、みんな、顔が引きつっていた。
(体操服を忘れただけで、こんな辱しめを受けるのか……!)
そこへやってきた担任があわてて「なんでパンツ一枚なの!脱ぐのは上だけでよかったのよ!」
いやいや、あなた、最初からそう言ったげなさいよ。
パンイチなわとび事件。その見せしめ効果はすさまじく、私たち2年5組の面々の心に深い傷を負わせ、当面体操服の忘れ物はなかったのは言うまでもない。
今考えると、小学生なのに、激しいパワハラを受けていた時代だった。昭和怖い。ちなみに、娘に話したらドン引きしていた。
体育を受ける権利のはく奪
話は戻って、赤白帽子問題。
私がここで違和感を覚えるのは、結果娘は、
授業を受ける権利をはく奪された
ことである。
担任の独断なのか、学校・学年の方針なのかわからないが、帽子があるにもかかわらず、体育の授業を強制的に受けられなくしたんだよ。そこんとこ、理解してる?と問いたい!まあ、わざわざ学校には言わないけどね……。
「4年1組の井元のお父さんは、モンペ(※モンスターペアレント)です。みなさん気を付けましょう!」と職員会議で共有事項にされてもいろいろ困るし。
相手が子どもだと言っちゃう問題
大人の世界だったら、忘れ物しただけで“強制見学”のような事件は起きないと思うんだよねぇ。
たとえば!
<会社員の忘れ物>
「やべ!名刺を忘れた……」
「なんだとー!営業マンが名刺を忘れるたぁなんたること!本日、君は自宅待機だ!」
とはならないよね。
<販売員が制服を忘れた場合>
「君ね……まったくしょうがないね。予備の制服を貸すから」
とだいぶこっぴどく指導されるかもだけど、“仕事見学”にはならないだろう。
「赤白帽子がないと見学です」
先生は、相手が子どもだから発言したんだと思う。保護者相手には絶対言わないでしょ?
「熱中症対策なら登校の帽子でもよくないですかね?」と返されたら、おそらく「そ、そうですね」となるだろう。
そう!会話の対象が子どもだから、言いくるめることができたのだ。
担任を困らせる小4のできあがり
数か月が経ったある日。担任から困った声で電話があった。
「あの、お父さん。お子さんが体育をお休みする日は、連絡帳に保護者のサインをしていただけないでしょうか」
「え?娘は体育を休んでいるんですか?」
「はい。ここ最近は、しょっちゅう……」
(また、赤白帽子を忘れたのか!)と一瞬考えたが、どうやら違うらしい。強制見学ではなく、自主的に見学を申し出ているとのこと。そういえば、最近体操服を洗濯した記憶がない。
帰宅した娘に問いただすと、
「足が痛かったのと……めんどくさかったけえ!」
どうやら、鬼ごっこのときははりきって参加するのだが、マット運動や跳び箱など、あまり興味のない授業の日は、サボっ……選り好んで休んでいたらしい。
はぁ、気分で決めるとは、なんとも……。
あれだけ、強制見学を憤慨していた娘。なんと、今では堂々と開き直って、むしろ担任を困らせる小4ができあがっていたのだ。
「とうちゃん、体育、休むわ!サインして」
今日は鬼ごっこではないらしい……。

今月のキャラクター
弊工房が運営している、キャラクター直売所『キャラ市楽座』。
今月のキャラクターはこれ!

立派な立て髪を持っており自身のトレードマーク。毎朝のブラッシングは欠かさず、どんなに強い風が吹いても、自分の力で完璧なシルエットを保つことに情熱を燃やしている。


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