当時小学1年生だった娘。「とうちゃん、あのね!きょうね!こんなことがあったんよ!」学校から帰ってくるなり、今日自分に起こった楽しいことを父と共有しようと一生懸命に話す娘。それを「うんうん、そうかそうか。楽しかったんだね」と頭をなでながら相づちをうつ父。
こんなピカピカの小学1年生の理想を持っていた私に、学校から帰ってくるなり娘がこうつぶやいた。
「あたし、さんすう、にがてなんよねぇ……」
いきなり悩みを打ち明けられた。思ってたんとちがう……。
そんなこんなで「ワックワクの一年生♪」とはかなりかけ離れた当時の娘と学校について書いてみようと思う。どうぞお付き合いのほど。
算数が苦手!?
いきなり苦手科目ができてもうた……。まだ2学期だよ?
そうは言っても小学1年の算数である。いやいや、得意とか苦手の段階ではないでしょ~。だって足し算引き算だよ?算数の中でも初期の初期。それくらいできるでしょ、と。
本人が何をもって苦手と思っているのかよくわからなかったので、「よっしゃ、父ちゃんと問題を解いてみよっか」と軽い気持ちで一緒に宿題をやってみた。
……娘、全然解けないのである。
父ショック!
このときの宿題は一、二桁の計算問題。「9+4」「13-9」とかのレベル。
よくよく聞いてみると、授業についていけてないようだ。「この問題がわかる人~?」先生の問いに同級生たちが「はい!はーい!」と競うように手を挙げるなか(なんでみんな答えがわかるんだろう……)と思っていたらしい。完全に置いてけぼり。それどころか解き方さえもわかっていなかった。
た、確かに、これは本人が苦手と思ってもおかしくない。
これはいかん!とあらためて教科書を出して、さかのぼって一緒に復習をしてみた。実際に数えたらわかりやすいだろうと、おはじきまで引っ張り出してきて一緒に実践してみたら、ようやく理解ができたみたい。
なんだ……ちゃんと理解できるじゃないか。……よかった!
早く気づいてよかった……
私「学校でわからなくても、家で父ちゃんが必ず教えてあげるから。大丈夫じゃけえね」
娘「……うん」
授業で自分だけわからなくて、不安だったみたい。なんであたしだけできないんだろう、と。
うぅ!娘よ、悩んでいたなんて知らなかったよ。気づいてあげるのが遅くてごめんよー。その晩父は涙した。
小学1年生で(自分は算数が苦手だ)と思い込んでしまうなんて。算数にかぎらず一度幼少期に思い込んでしまうと、一生引きずることもある。
この場合、算数や数学、統計など数字が出るたびに(苦手だからなぁ)と自分で壁を作り、一生取り組まなくなるかもしれない。
ほんとに早く気づいてよかった……。
苦手が得意になった娘!
その日から毎日宿題を一緒にやっている。横に教科書を広げて、わからない箇所が出てきたら、教科書に書いてある該当箇所を指し示してあげる。最初はすぐ私に答えを教えてもらいたがっていた娘だが、根気強くやっていると、そのうち(あぁ、なるほど。解き方は教科書に書いてあるのね)と自分でページをめくるようになった。
おかげで今や算数は超得意!(本人も得意だと思い込んでいる!)
足し算引き算、掛け算もお手のもの。「これから100もん、やるけえね!とうちゃん、じかんをはかっといてよ!」と一人100本ノックをやっている。なかなかストイックである。それくらい自信がついた。
学校の授業システム、今のままでいいのか!?
そこで思うのがですね、みなさん。学校の教え方ですよ。入学してほんの数か月。
「あたし、さんすう、にがてなんよねぇ……」と思わせる学校システムってどうよ(怒)
どう教えたらこんなんなっちゃうのよ。
誤解がないように先に言っとくけどね、担任の先生の教え方が悪い、という意味ではないのよ。教職員は学習指導要領に則って教鞭をとっておられるだけだから、担任の先生をディスろうとはさらさら思っていないの。
そう!私が激おこぷんぷん丸なのはね、
学校の授業システム、今のままでいいのか!?
ってこと。
だってさ、初めて数字に触れた小学1年生がまだ2学期の段階で「あたし、さんすう、にがてなんよねぇ……」とつぶやく時点でその指導システムは欠陥ものでしょ。習得していくはずが、嫌いにさせちゃってるんだからさ。結果が真逆。
それだったら私が教えたほうが断然いい!(実際娘を教えたのは私だし)
本来なら「数字って楽しいよ~」と思わせないと。
あのまま私が気づかずに、娘がずっと苦手意識を持ったままだったとしたら……末恐ろしいわ!
一生困るだろ。勉強を教えてくれるどころか、嫌いにさせてしまって、なにしてくれとんじゃい。
学校の授業システムはもうおそらく崩壊している
数日後、授業参観で算数の時間を見学する機会があり、そこで私は確信した。
学校の授業システム、やっぱ遅れてるわ
そこには40年前と同じ光景が広がっていた。授業の進め方、黒板を書き写して手を挙げる。私の小学校当時のまま……。タイムスリップしたかと思った。
昭和と令和、なぜ同じ授業ではだめなのか
私の通った小学校は当時ひとクラス45人で1,200人も在校生がいた第二次ベビーブームの時代。とにかくカリキュラムをこなせ!とばかりにイケイケで進んでいく授業だった。
今思えば、クラスには勉強ができない級友がちらほらいた。でも今ならわかる。人数が多すぎて担任の目が行き届かなかったのだ。
幸いにも私は勉強が好きで、テストも常に100点。みんなから「井元くんすごいね!」とよく言われた。でもそのたびに(教科書を見れば全部書いてあるのに、なにがすごいんだろう)と思っていた。それはたまたま教科書の活用法など「勉強のしかた」をわかっていたからで、勉強ができない級友たちも、もしまわりにやり方を教えてくれる大人がいたら、みんなちゃんと勉強ができたと思う。
でもあの時代は少々落ちこぼれがいてもかまわずに授業をすすめないといけない。そうでもしないと教科書が最後まで終わらなかった。担任もあの人数相手に大変だったと思う。正しいかどうかは別として、あの時代は前へ進まないといけなかった。そしてなにより、保護者も勉強に関しては学校まかせだった。そんな時代だった。
あれから40年経った。現在はひとクラス25人。なのにそこには当時の授業と同じ光景が広がっていた。ふと私の記憶の中から昭和の香りが漂ってきたほどだ。
学校の授業システムってなにひとつ変わっていないんだ……。
衝撃を受けた。
授業システムからこぼれ落ちた娘
娘のようなマイペースな児童は、落ちこぼれる。おそらく授業で解き方を教わったときも、理解するところまでいかず、考えているうちに授業は次項へ進んでいたんじゃないかと思う。それが繰り返され、ついにはどこをやっているのか迷子になり、気づいたらまったくついていけなくなった。毎日算数の時間はただ座っているだけだったようだ。
余談であるが、前述の授業参観のときも、開始15分あたりから集中力が切れていく娘の姿を参観できた。わかる、授業って内容がつまらんもんな……。
子どもたちの成長に寄り添う新しいアプローチを模索せよ!
数をこなすために効率を求められた昭和とは違い、今や少子化。もっと子どもひとりひとりに寄り添える授業システムはきっとできるはず。
低学年は問題の解き方を教えればいい、ってものじゃない。それだけじゃだめだ。数字に親しむのが一番大事。「数字って楽しいよ~」と指導してあげなくてはならない。ちなみ、私が娘を教えてきたなかで、一番重視したところはここ!とにかく、嫌いとか苦手とか絶対思わせてはならない。(勉強にかぎらずたとえばサッカーやピアノなど、子どもを指導する場合これは鉄則ね)
するとね、数字を好きになった子どもは、勝手に外で算数をし始める。車のナンバーだったり、町中の看板にある電話番号だったり、番地だったり。勝手に足したり引いたり。そのたびにうれしそうに教えてくれる。
「とうちゃん!あのクルマ、ぜんぶで19だった!」←足したらしい。
世の中には数字があふれていることに子どもは気づく。先日、岸田政権の支持率が低い、というニュースを見て「30しかないんだって」とか言い出したのには笑った。そう、世の中は数字で動いているんだよ。
学校の存在意義
私が娘を小学校に通わせる大きな理由。それは「算数」と「国語」を勉強してきてほしいから。生きていくうえで、数字と語学力は必須。ここで基礎がしっかりしているかどうかで将来の思考形成に大きく影響があるといっても過言ではない。特に低学年のうちはとにかく「算数」と「国語」をがんばってほしい。(極論だが、あとはどうでもいい。体育、道徳とかはさほど重要なファクターではない)
ところがどっこい、期待して預けたところ、娘は学習してくるどころか(自分は苦手)と思い込んで帰ってきた……。
おまんとこの授業システム、どうなっとんじゃい!
私が激おこぷんぷん丸になるのもおわかりいただけたかと思う。
繰り返すが、担任の先生の教え方が悪い、と言っているのではない。教職員は学習指導要領に則って教鞭をとっておられるだけだから、担任の先生をディスろうとはさらさら思っていない。学習システムそのものが問題だと思っている。
これは誰が悪いんだろう。教育委員会なのか文部科学省なのか。
6年も通わせていたらダメになる
令和4年度の国立、公立、私立の小・中学校の不登校児童生徒数が約29万9千件(過去最多)、うち学校内外で相談を受けていない児童生徒数が約11万4千人(過去最多)、うち90日以上欠席している児童生徒数が約5万9千人(過去最多)、小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数が約68万2千件(過去最多)、うち重大事態の発生件数が923件(過去最多)等の結果が明らかになりました。
令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた緊急対策等について(文部科学省)
29万人が不登校……。
おそらくこの中には「行かなくていい」と判断した本人や保護者も多数含まれているんじゃないかと思う。学校って行く必要ないよね……?って。
その気持ち、ものすごいよくわかるわ。一日何時間も拘束されたうえ、苦手科目を作らされる授業システム。こんなところに6年も通わせていたらうちの子ダメになるわ。私もできうることなら自宅で学習させたいんだよ。でも、仕事もしないといけないし、ずっと家におられても困る。だから小学校に行かせるしかない。私たち保護者には選択肢がない。
学校の授業システムの課題、現代に求められる変革、そして、その学習システムが子どもたちに与える影響……。
関係者のみなさんにおかれましては、本気で取り組んでもらって、学校の授業・学習システムが現代の子どもたちに合ったものに変わることを心から期待したい。
おまけ
私と考えを同じくする経営者たちが、今全国に着々と、子どもひとりひとりに寄り添えるフリースクールの開校を準備していると小耳にはさんだ。保護者からしたら選択肢がやっぱほしいから歓迎だ。もし近くにできたらぜひ見学に行ってみたい。そんな時代がくることを今から心待ちにしている!